有名人のご病気に思うこと

  • 2017.06.26 Monday
  • 00:10

 もう30年近く経つけれど、ずっと元気だった父が入院した。まだ、50代だった。  

 

 検査の結果、肺の、めずらしい病気だった。 それからは自宅療養だった。 

 

 少しあと、有名な女性歌手が同じ病名で入院なさった。その時父は、「あんなすごい人と同じ病気になるなんて!」と、嬉しそうにしていて、親戚や友人に得意げに自分の病名を言っていた。  

 

 数ヶ月後、その女性歌手が亡くなった。父は何も言わなかった。  

 

 父の病気は治らないと、母や兄や姉や私には聞かされていたし、もしかしたら父自身も苦しさの中わかっていたかもしれないが、有名女性歌手の死に、私は父になんて言ったらいいか、どうすればいいのかわからなくなった。  

 

 父の、その日が来るのが怖くて悲しくてたまらなかった。  

 

 7月の夜中、母が私の部屋のドアを叩き、「お父さんが息してないみたい。」と言った。姉が呼んだらしい救急車が来て、救急隊の人たちが来たけれど、病院へ運ぼうとせず、いつもの近所のお医者さんを呼んだ。死亡の確認がされた。 兄がタクシーで来て、私の頭をなでた。  

 

 それから何年かして、アナウンサーの逸見さんがご病気の記者会見なさった時に思った。だいじょうぶなのかなぁ・・・と。

 

 治ってほしい気持ちしかなかったけれど、同じ時期、同じ病気でいる患者さんとそのご家族が日本中にはたくさんいらっしゃる。 逸見さんにもしものことがあった時、絶望に突き落とされる痛みを想像すると、心配でたまらなくなった。  

 

 逸見さんも、亡くなった。    

 

 今、私が通院すると、たいてい検査を待つ場所や、お薬が出されるのを待つ薬局では、大きなテレビでお昼の番組が流れている。テレビがないのは診察室と会計の前だけだ。     

 

 チャンネルを替えればいいだけかもしれないし、テレビもつけなければいいのかもしれない。  

 

 だけど、有名人が病名を公表して闘病なさることは、とても恐ろしいことのようにしか私には思えない。  

 

 父が、「あんなすごい人と同じ病気なんだから」と言っていたようになれる人もいて、「一緒に、頑張ろう!」となれる患者さんとご家族もいるには違いない。 けれど、突然のその日の苦しみは、例えようがない。  

 

 2年前、新聞で、久しぶりに父の病気の名前を見た。懐かしいような気持ちになった。いい薬ができたというニュースだった。すごく嬉しかった。    

 

 最近は、子供の頃には考えられなかったほど、有名人と一般人の距離が近い。雲の上の存在の人だって、わざわざ降りてきてくれるような時代だ。  

 

 見るも見ないも人それぞれだろうが、知らなくていいこともある。知らない方がいいこともある。  

 

 病院や薬局の待合室で、喪服の有名人が毎日映し出され、無意識のうちに強い印象だけが残る。怖いことだと思う、とても。  

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